研究実績の概要 |
Nrf2はがん代謝の制御遺伝子であると報告された。がん代謝は腫瘍免疫と複雑に関連していることも知られており、Nrf2もその制御に関わっていると報告された。この研究にてNrf2が腫瘍免疫を介して肝胆膵領域癌進展に与える影響について分析した。 Nrf2が膵癌進展に関与する機序を解明すべく、8種の膵癌細胞株を用いて実験を行った。AsPC-1がNrf2高発現株であり、growth assayではNrf2ノックダウンにて著名な増殖能の低下を認めた。TCGAデータベースでは膵癌においてNrf2高発現群は低発現群に比べ有意差をもって全生存率の低下を認めた(HR=1.65, P=0.04)。Nrf2とPD-L1発現の間には正の相関を認めたものの(R=0.31, P<0.001)、Nrf2とCD8発現の間には相関を認めなかった(R=0.05, P=0.49)。膵癌切除標本を用いて、これら免疫細胞の免疫染色を行った。PD-L1高発現群は低発現群と比べ、有意差をもって全生存率の低下を認めた(P=0.006)。CD8低発現群は高発現群と比べ全生存率の低下を認めた(P<0.001)。 胆管癌においては、Nrf2とPD-L1発現の間に相関関係はみられなかったが(R=-0.07, P=0.34)、Nrf2とCD8発現には負の相関関係を認めた(R=-0.22, P=0.003)。胆管癌切除標本を用いて、これら免疫細胞の免疫染色を行った。PD-L1高発現群は低発現群と比べ、有意差をもって全生存率の低下を認めた(P<0.001)。CD8低発現群は高発現群と比べ全生存率の低下を認めた(P=0.02)。 本研究により、肝胆膵領域癌(特に膵癌と胆管癌)においてNrf2が腫瘍免疫と関連して腫瘍進展を促し、患者予後の悪化に関与している可能性を示すことができた。
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