研究課題/領域番号 |
18K16371
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
志賀 一慶 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20747282)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌間質相互作用 / 癌関連線維芽細胞 / 炎症性サイトカイン / 血管新生 / 浸潤能 / 薬剤耐性化 |
研究実績の概要 |
癌治療のさらなる発展を目指すためにその進展機序を十分解明することが必要である。しかしながら癌組織は癌細胞のみならず周囲の間質細胞と構成されておりそれらが互いに影響しあっている。これを癌間質相互作用という。間質の主成分である繊維芽細胞は癌関連線維芽細胞といわれている。大腸癌臨床検体から繊維芽細胞を単離、培養し、癌関連線維芽細胞であることを確認するためにα-SMAで免疫染色をおこなった。また腫瘍組織から離れた部位でも大腸壁の間質を採取、そこから繊維芽細胞を単離、培養した。これを正常大腸繊維芽細胞とした。それぞれの細胞の特徴を把握するために大腸癌細胞株と癌関連線維芽細胞のRNAを抽出しマイクロアレイアナライシスをおこなった。これらの細胞の特性をつかむことにより近年注目されている癌周囲微小環境の解明につながると思われる。また大腸癌細胞、癌関連線維芽細胞、その共培養の培養上清を使用してサイトカインアレイを行った。いくつかのサイトカインに発現の差を見出した。その中でも炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン6は癌細胞よりも癌関連線維芽細胞より多く分泌されていた。大腸癌細胞、癌関連線維芽細胞よりcDNAを抽出しPCRを施行した。癌関連線維芽細胞からのインターロイキン6は発現が亢進していた。一方、大腸癌細胞ではほとんど発現されていなかった。EPAを投与するとインターロイキン6の分泌は抑制された。 また他の固形癌の血管新生に関与しているといわれているキチナーゼ様タンパクの分泌も亢進していた。浸潤能に関しても癌細胞単独と比べて癌細胞と癌関連線維芽細胞を共培養することによって浸潤能が亢進した。これらの機序の解明をさらにすすめていき化学療法の耐性化に影響を与える因子についても解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
癌関連線維芽細胞を単離、培養し今までの研究結果と相違がないことを確認できた。ただし癌関連線維芽細胞自体もそれぞれの腫瘍組織、検体によって性質の差があることも事実である。癌関連線維芽細胞と癌細胞の性質の違いを見出すことによってそれぞれの細胞の特性を明らかにしていく準備は整ったと判断している。 まずは癌関連線維芽細胞より炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン6が多量に分泌されておりそれが癌細胞の血管新生を亢進させ、その中和抗体を投与することにより血管新生を抑制、またnatural productであるEPAを投与することでも抑制されることを確認できた。また癌細胞の浸潤能に関しても癌細胞と癌関連線維芽細胞を共培養することで癌細胞の浸潤能、遊走能が亢進した。今後、当初の目的である腫瘍の薬剤への耐性化にこの癌関連線維芽細胞が関与しているのかその機序を見出していく。
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今後の研究の推進方策 |
癌関連線維芽細胞に作用させることによって癌の進展に大きく関わっている増殖、転移、浸潤能に変化を与えることが出来るか研究を続けていく。 癌関連線維芽細胞は腫瘍細胞の血管新生については大きく関わっていることは以前の我々の研究で確認できている。浸潤能、遊走能についても検討していく。 浸潤能、遊走能に関してはマトリックスメタロプロテアーゼの活性を評価しザイモグラフィーや浸潤アッセイで評価していく。また薬剤の耐性化に関わる因子についても検討していく。また既存の抗腫瘍薬を投与し耐性株を作成、耐性化を得た細胞株と耐性化を得ていない細胞株との違いを見出す。癌関連線維芽細胞の培養上清を癌細胞に曝露、もしくは共培養することによって抗腫瘍効果の低下を認めるかどうか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より研究が進まず物品費に関しては予定額と差が生じた。
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