癌組織には癌細胞とその周囲の間質から構成される。間質の主成分であるのが線維芽細胞である。その線維芽細胞は通常の線維芽細胞とは違った性質をもち癌関連線維芽細胞とよばれている。我々は今回の研究で癌関連線維芽細胞と正常線維芽細胞、癌細胞の性質の違いを明らかにし癌関連線維芽細胞の役割を明らかにすることによって癌治療における抗腫瘍薬の耐性化の機序の解明を試みた。癌の進展には増殖、浸潤、血管新生といった3本柱が重要であるといわれている。癌細胞と癌関連線維芽細胞、正常線維芽細胞の培養上清中のタンパクを調べると癌関連線維芽細胞から他の細胞より多く分泌されているタンパクをいくつか同定した。炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン6は癌関連線維芽細胞から多量に分泌されそれを癌細胞に作用させることで癌細胞の増殖能が亢進することをWST-1 assayで証明した。またそのインターロイキン6が血管新生因子であるVEGFの分泌を亢進させ血管新生に影響を与える事も証明しインターロイキン6の作用をEPAで抑制することによって血管新生の亢進を抑える事を証明した。さらに血管新生に関しては癌関連線維芽細胞から分泌されるCHI3L1タンパクがインターロイキン8の分泌に関与して血管新生を亢進していることも突きとめた。また癌関連線維芽細胞の培養上清を癌細胞に作用させることによって癌細胞の遊走能や浸潤能も亢進することをinvasion assayを用いて証明するとともにさらにインターロイキン8やCCL2といった癌関連線維芽細胞から多く分泌されているタンパクを癌細胞に投与することで癌関連線維芽細胞の培養上清を作用させるのと同様に浸潤能が亢進することも証明した。
|