肝虚血再潅流障害は肝切除手術、肝移植、外傷、出血性ショックなどで起こりうる病態である。肝虚血再潅流障害により引き起こされた炎症の収束や組織修復の遅延は、肝不全に至り患者の予後は極めて不良となる。しかしながら、肝障害後の肝修復制御機構については不明な点が多い。 前年度に引き続いて、プロスタグランジン(PG)E2受容体サブタイプの一つであるEP3受容体シグナルが肝虚血再潅流後の肝組織修復に果たす役割とその制御機構を解明することを目的として研究をおこなった。肝修復のキープレイヤーであるマクロファージが肝障害部に集積して炎症性マクロファージから修復性マクロファージにその形質を転換させることが必須である。この形質転換にはEP3受容体シグナルを介した樹状細胞とのクロストークが必要であることを調べた。単球由来樹状細胞を移入すると肝修復は樹状細胞EP3受容体シグナルに依存して促進した。このときマクロファージ形質転換にも関与した。培養骨髄細胞を培養単球由来樹状細胞を共培養するとマクロファージはEP3受容体シグナルに依存して炎症性マクロファージから修復性マクロファージに分化した。さらに樹状細胞からIL-13の産生が増加した。そこでマクロファージ形質転換がIL-13に依存していることを培養系実験で確かめた。以上から肝虚血再潅流障害後には集積樹状細胞がマクロファージとEP3受容体シグナルを介してクロストークし、樹状細胞由来のIL-13産生がマクロファージ分化を刺激しての肝修復を促進させていることが示された。
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