本年度は主に以下の2点に関して検討を進めた。 第一に、DLL3を標的とする新規化合物を同定するために、化合物のスクリーニングを行う実験系の構築に取り組んだ。DLL3の発現量を指標とし、High-Content imagerを用いて画像を撮影したものを数値化するスクリーニング系が構築されつつある。今後、構築されたスクリーニングアッセイを用いて、化合物のスクリーニングを実施する計画である。 第二に、消化管神経内分泌細胞がん以外にどの程度、DLL3が標的となり得る疾患があるかを想定するために、既報文献のレビューを実施した。レビューでは、DLL3を標的とした研究や治療が最も進んでいる肺がんの現状として、抗体薬物複合体であるRova-T(第III層試験の結果で研究開発プログラムが中止されている)以外にも、DLL3を標的とした薬剤が開発されていることが挙げられた。また、他のがん腫でもDLL3の発現亢進が多数示されていた。興味深いこととして、発現亢進が示されているがん腫は、主にホルモン産生と関連しているがんであり、治療法が未確立な疾患で希少腫瘍である傾向であった。レビューした結果に関しては内容をまとめ現在、論文投稿中の段階である。 今後のDLL3の発現を調節する化合物を同定し、奏功が期待される希少腫瘍を中心に幅広い効果の検証を実施したいと考えている。
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