研究課題/領域番号 |
18K16376
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
清水 徹之介 大阪医科大学, 医学部, 講師 (00727092)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | S100A4 / sphere |
研究実績の概要 |
これまでの、スフィアを継代する事でスフィア形成率が増加する結果を受け、引き続き実験を行った。S100タンパクは、主に細胞質に存在するが、細胞外に存在し、autocrineやparacrineによって他の細胞間で作用する場合もある。血流に入り遠隔にある細胞とも作用するもので、細胞表面レセプターと相互作用し、主に腫瘍の発生、転移、浸潤を促進する方向へ作用するとされている。S100A4はその中の一つで、乳癌、膵癌、子宮体癌、卵巣癌、胃癌、腎細胞癌、脳腫瘍などでの発現が確認されている。既に作成していたスフィアのパラフィンブロックを用いて、本タンパクの免疫染色を行ったところ、スフィアの形状(いびつなものから完全な球形のもの)によってS100A4タンパク発現の局在が異なる事が分かった。いびつなスフィアは細胞質全体に存在する細胞が多いのに対し、完全な球形のものは細胞内の一部へ局在する傾向を示した。局在に対して、細胞外マトリックス染色、蛍光二重染色を行ったところ、S100A4はGolgi体に局在しているらしい事が分かった。次に、S100A4のSphere形成における役割を検証した。まずは、sphere形成前後でのS100A4の変動をWestern blot法を用いて検証した。Sphere形成後ではS100A4の発現が有意に低下していた。同時にE-cadherinの発現の低下も認めた。しかしながら、sphere形成のためには無血清培地が必要であり、この無血清培地で培養するだけでもS100A4の発現が低下する事が分かった。次に、S100A4をノックダウンしたところ、E-cadherinの発現が低下した。また、当院での膵癌切除標本71例に対して、S100A4の免疫染色を施行し、無再発生存期間を検討したところ、S100A4発現が低い群が有意差をもって予後が良かった。(P=0.031)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Sphere形成に2週間を要する事、Sphere形成に用いていた無血清培地の製造が停止している事により、研究をすすめられない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
今回、WBの結果が無血清培地による修飾の影響である事を否定できないため、S100A4とsphere形成へのかかわりについては、指摘しきれなかった。しかしながら、S100A4をノックダウンした際にE-cadherinとの相関を認めたため、これらの動向は関連していると考えられる。これらの結果を踏まえて、E-cadherinとの関係も検証しつつ、引き続きSphereを形成した上で、抗癌剤耐性や浸潤能などの検証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
培地の製造停止などにより研究が一時停止していたため必要物品を購入する機会が減少した。代わりの培地を用意し、研究をすすめていく。その際、ノックダウンに必要なSiRNAや免疫染色、WBに用いる抗体を購入する必要があり、次年度はそれらの購入を行う予定である。
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