研究課題/領域番号 |
18K16379
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
吉田 有里 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (50646057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再生医療 / 細胞治療 / 毛細血管 / 周細胞 / 血管内皮細胞 / 動脈硬化 / 末梢動脈疾患 |
研究実績の概要 |
重症下肢虚血における末梢動脈バイパス手術では、自家血管をグラフトとして用いた手術が行われるが、質的不良や術後内膜肥厚によるグラフト不全などの問題も多い。そこで、拒絶反応や再狭窄のリスクが少ない血管グラフトを開発するための新たなアプローチとして、我々が末梢組織から精製・分離に成功した毛細血管周囲幹細胞(Capillary Stem Cell;CapSC)を用いた、バイオグラフトの構築、末梢動脈疾患に対する血管再生治療についての検討を行うこととした。CapSCは血管周細胞(Pericyte;PC)のうち、EphA7陽性細胞として分離することに成功していた。このため、1年目の取り組みとしては、CapSCのより効率的な分離方法について検討し、また、その培養方法について最適化した。また、これまでの研究でCapSCは血管や平滑筋細胞への分化能を有しており、微小血管の構築を可能にする能力を有すると推察されていた。そこで、次にCapSCの生体内での挙動や、現在再生医療分野で一般的に用いられている脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)などとの違いを明らかにすることを目指した。C57BL/6Nマウスの片側下肢虚血モデルを作製し、虚血肢にC57BL/6Nマウス由来CapSCを導入し、二次元レーザー血流計を用いて測定した。対照群はC57BL/6Nマウス由来ASC、PBS導入群とし、術後4日目、7日目、14日目、21日目、28日目の血流を評価し比較検討した。その結果、CapSC導入群では、コントロール群に比べ有意に虚血改善効果が認められた。CapSC細胞治療では、マウス同種移植における、下肢虚血改善の有効性を確認することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下肢虚血性疾患へのアプローチとして、毛細血管周囲幹細胞であるCapSCを用いた虚血改善、血管新生について研究すべく、1年目としては、当研究室で分離に成功していたCapSCの、より適切な分離方法についての検討と、CapSCの培養条件の最適化についての実験を行った。これにより、CapSCをより良い条件で分離することが出来、その後の培養を行うことが出来るようになった。また、C57BL/6Nマウス下肢虚血モデルを作製し、虚血部位にそれらを導入することによる下肢虚血改善効果について検討した。二次元レーザー血流計での計測においては、対照群と比較して明らかな虚血改善を認めた。今後、さらにCapSCの虚血・血管新生に関わる機能を解明するために、CapSCにおけるEphA7の機能を評価すべく、in vitroでEphA7ノックダウンを行い、それらの分化能や血管新生能について評価するための実験系の構築を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CapSCを用いた虚血改善に、in vitro、in vivoの両側面から研究を行う予定としている。まずはCapSCにおける、各種遺伝子の発現の差異について評価する。さらにCapSCを分離する際に用いているEphA7そのものの、CapSCやそれらの分化能に及ぼす影響について細胞レベル、遺伝子レベルで評価を行う。
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