重症下肢虚血における末梢動脈バイパス手術では、自家血管をグラフトとして用いた手術が行われるが、質的不良や術後内膜肥厚によるグラフト不全などの問題も多い。そこで、拒絶反応や再狭窄のリスクが少ない血管グラフトを開発するための新たなアプローチとして、我々が末梢組織から精製・分離に成功した毛細血管周囲幹細胞(Capillary Stem Cell;CapSC)を用いた、バイオグラフトの構築、末梢動脈疾患に対する血管再生治療についての検討を行った。我々はCapSCをEphA7陽性周細胞として分離する方法を確立し、より効率的な分離方法の開発、培養方法の最適化について検討した。さらに、CapSCの生体内での挙動として、C57BL/6Nマウス下肢虚血モデルを作製し、脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)、PBS 、EphA7陰性周細胞(Ct PC)との比較検討を行った。その結果、CapSC群では、対照群に比べ有意に虚血改善効果が認められ、組織学的評価において導入したCapSCによる微小血管構築が認められた。これらの結果から、筋肉組織内でCapSCsは血管新生に寄与していることが明らかとなった。これらについてSTEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINEにて発表した(Capillary-resident EphA7+ pericytes are multipotent cells with anti-ischemic effects through capillary formation doi: 10.1002/sctm.19-0148)。学術総会では第60回日本脈管学会総会においてJapanese College of Angiology Award 最優秀賞を受賞した。さらにCapSCsによる検討をすすめるべく、実臨床における検体採取方法や症例についての検討も行った。
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