研究実績の概要 |
大動脈弁狭窄症は高齢社会には発病率が多くなっているが、治療方法としては大動脈弁置換術しかないのが現状である。外科的介入が治療成績が満足できるが、手術に耐えない患者は約30%前後存在している。本研究室はTNF-αおよび高リン酸誘発性石灰化を基づいて石灰化の分子機構の解明と石灰化の進行を抑制する薬物の探索を行い、侵襲がない薬物治療法の確立を目指している。 大動脈弁狭窄症患者の大動脈弁より大動脈弁間質細胞を単離し、TNF-αや高リン酸の刺激に対して感受性が高く、石灰化が亢進した。石灰化関連遺伝子BMP2/ALPなどの発現や活性が亢進することも明らかにした。大動脈弁間質細胞の集団の中に、CD45-/CD73,90,105+の未分化細胞の存在を明らかにし、特にCD34-の未分化細胞がCD34+の細胞よりTNG-αや高リン酸に対して感受性が高く、易石灰化性を示していた。また、CD34-の未分化細胞はTNXBの遺伝子発現が低下していることがわかった。石灰化に対してどのような機能しているかまた不明である。これらの結果から考えてみると、CD34-の未分化細胞が石灰化の原因細胞に近いと考えられ、今後の石灰化の分子機構のさらなるの解明に対して寄与する。 同時に、TNF-αおよび高リン酸誘発性石灰化をモデルにし、石灰化の進行を抑える薬物の探索を行っている。その中、黄連解毒湯は石灰化の進行を抑制する効果を認められた。かつ、石灰化関連遺伝子BMP2の発現を抑制した。黄連解毒湯は大動脈弁石灰化を抑制する薬物治療の候補となる可能性が示された。これから、黄連解毒湯の中に含まれる有効成分をさらに解明し、石灰化を抑制する薬物治療の確立につながる。治療方法が確立できれば、高リスク患者に投与し、大動脈弁狭窄症の発病率を抑え、あるいは大動脈弁狭窄症患者の病態進行を止め、患者負担や医療費の削減につながる。
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