本研究では、心臓大血管手術で使用する人工心肺装置でかつて用いられていたが、塞栓症などの合併症頻度が高いという理由から使用されなくなった「気泡型人工肺」を、近年注目を集めているマイクロバブルを用いて使用することで安全に再実装することが出来ないかという臨床的疑問を解決するために研究を行ってきた。 これまで生理食塩水を使用した実験を行い、マイクロバブルを用いることで、流量依存性に、通常の酸素投与よりも酸素飽和度が上昇することを確認してきた。この後、ヒト血液を用いた閉鎖回路での酸素溶解度調査、溶血調査を行う予定でいた。また、動物実験でも同様の研究に加え、マイクロバブルが塞栓源となり臓器のair embolismが生じないかをブタを用いた動物実験で術後臨床症状や、犠牲死後の組織検査等で確認する予定であった。 しかしながら、COVID-19の流行語、人工心肺回路の供給が不安定であった。そのため、臨床使用以外の回路購入が困難な状態が続いていた。本研究テーマに関係する関連学会での調査を行い研究の再開を目指し、研究期間の延長を2度行った。しかしながら、人工心肺、特に実験で必要となる小児用人工心肺の供給は不安定であり、臨床使用目的以外での購入、使用は困難であることから、2022年度の実験が行えなかった。この状況は2023年度も継続するという通知をうけたことから、人工心肺回路が必須である本研究の継続は断念せざるを得ないという結論に至った。
|