研究実績の概要 |
大動脈瘤は破裂すると救命が極めて困難な疾患で、治療は破裂の予防であるが、現状の外科的・内科的治療には限界があり、新たな治療法の開発が望まれている。研究代表者らは、間葉系幹細胞(MSC)静脈内投与による大動脈瘤治療の有効性を示してきた。治癒メカニズムにはMSCのパラクライン作用が示唆され、大動脈瘤病変部位で直接作用しているのはMSCではなく、抗炎症性M2マクロファージ(M2MF)であると推察できた。そこで、通常、大動脈瘤病変部位には、炎症性M1マクロファージ(M1MF)が集積しており、これをM2MFへ形質転換させることが、治療戦略として成り立つのではないかと考えた。形質転換の誘導因子として、①M2MF誘導因子(IL-4/IL-13)、②M2MF細胞、③M2MF培養上清、④M2MF由来エクソソームに着目し、比較検討を行った。 前年度に行ったIn vitro, ex vivo検討で、②M2MF細胞が最も高い効果が得られたことから、本年度では、より強い効果が得られた誘導因子②M2MF細胞を用いて、in vivoにて効果を判定した。比較対照群には生理食塩水(生食)を用いた。大動脈瘤モデルマウスにM2MFを静脈内投与または腹腔内投与し、投与開始から 2,4週間後に、エコーで瘤最大短径を継時的に測定した。結果、どちらの投与方法でも瘤径拡大抑制がみられたため、肺への移行が少なかった腹腔内投与法を選択した。また、投与細胞数検討では、細胞数依存性は見られなかったため、細胞投与 100万個 / 0.2mL で検討を進めた。 次に本実験として、大動脈瘤モデルマウスに100万個同系統他家M2MFを腹腔内投与し、2, 4週間後にエコーで大動脈瘤径測定した(生食群, M2MF群, 各n=10)。4週間後に屠殺し、顕微鏡下にて瘤径最大短径を計測した。その結果、生食群では瘤径が拡大したのに対し、M2MF群では瘤径拡大を抑制し、4週後で有意差を認めた(1.5 vs 2 mm, p<0.001)。
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