研究課題
【背景】ヒトiPS細胞由来心筋シート移植の心筋補充療法としての治療効果を向上させる為には、移植後心筋組織の生着増強が必要である。心筋細胞に特異的な細胞外マトリックスであるラミニン221は、心筋細胞表面に発現しているインテグリンα7β1と結合し、outside-inシグナルを活性化、抗アポトーシス作用により、心筋細胞の生存に寄与することが報告されている。本研究では、虚血性心筋症ラットモデルに対するヒトiPS細胞由来心筋組織移植において、ラミニンを付加することにより生着が改善し、治療効果を増強させることを仮説とした。【方法・結果】ラミニン221付加の有無による、ヒトiPS細胞由来心筋細胞への影響をin vitroで評価した。運動機能はラミニン群で有意に収縮、拡張速度が増強し、代謝機能はラミニン群で有意にミトコンドリア最大呼吸速度が増強し、低酸素条件下での培養ではラミニン群で有意に生存細胞数が増え、細胞傷害性が低減された。また、低酸素条件下において、ラミニン群で抗アポトーシス関連遺伝子であるBCL2、BCL2L1の発現が有意に増強した。In vivoでは、免疫不全モデルラットを用いて虚血性心筋症モデルを作成し、2週間後に移植を行った。ラミニン付加心筋組織移植群、心筋組織移植群、フィブリンシート移植群の3群で、移植後生着と、心機能の推移を評価した。また、傍梗塞部位におけるサイトカイン関連遺伝子発現と血管新生も比較した。心筋組織の生着はラミニン付加心筋組織群で移植後早期に有意に増強を認めた。心機能はラミニン群で移植後4週目において、その他の2群と比較して有意に心機能の改善を認めた。傍梗塞部位におけるサイトカイン関連遺伝子の発現、血管新生も有意にラミニン群で増強を認めた。【結語】ヒトiPS細胞由来心筋組織にラミニンを付加することにより、心筋細胞の構造機能・ミトコンドリア機能・抗アポトーシス活性は増強し、組織生着は改善され、治療効果を増強した。
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J Am Heart Assoc
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