我々は「低酸素刺激で機能を賦活化した末梢血単核球細胞移植」と「血管成熟因子アペリンの全身投与」による新たな血管再生治療法を考案し、その有効性を検証してきた。本併用療法において、同時投与したアペリンは、低酸素プレコンディショニングを施した末梢血単核球との相乗的効果により新生血管の成熟を促進することを明らかにしてきた。しかし、ヒトに投与可能な薬剤としてのアペリンは未だ開発されておらず、アペリンを用いた治療的研究の課題であった。 本研究では遠隔臓器虚血プレコンディショニング(RIPC)による生体内アペリンの増加が、先行研究同様に細胞移植治療との相乗効果を発揮しうるかを検証した。さらにRIPCによるアペリン増加に関してマウスおよびヒトにおけるmicroRNAの解析を行い、そのメカニズムを検証した。 マウスRIPC施行24時間で血中アペリン濃度は有意に増加した。さらに増加した内因性アペリンと実際のアペリン投与で増加したアペリン濃度は同等であった。この結果から、RIPCはアペリン投与と同等の血中アペリン濃度の上昇をもたらすことが明らかとなった。 次にアペリンの発現上昇に関して重要であると考えられているAngiopoietin-1の発現に注目し、エクソソームに含まれるmicroRNAの解析を行った。結果、マウスにおいてはAngiopoietin-1発現を誘導するmiR-126-3pの発現亢進、Angiopoietin-1発現を抑制するmiR-711の発現低下が見られた。ヒトにおいても、Angiopoietin-1発現を抑制するmiR-204-3pの発現低下が見られた。これらの結果からRIPCによりAngiopoietin-1の発現が亢進した結果、アペリンが上昇する可能性が示唆された。
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