<背景>心不全に対する幹細胞移植に関して自家細胞移植が多く研究されてきた。しかし自家移植は準備時間やコストが多大であるが故、臨床では普及していない。本研究は免疫原性が少なく、比較的簡便である間葉系幹細胞(MSCs)を使用して、問題点を回避する他家移植を検討することを目的とした。 一方で近年の幹細胞研究から、臓器機能が回復する主な機序は移植細胞が機能的な細胞に分化することでなく、分泌された成長因子が臓器を刺激し、内因性の再生を促進することだと分かった。幹細胞が放出するエクソソームは成長因子を含み、濃縮や反復投与が可能なため、エクソソーム投与によるCell-free再生医療が期待されている。以上から本研究は、予定した「MSCsによる他家移植」に関して内容を見直し、「MSCsが放出するエクソソームの解析」や「エクソソームに関する幹細胞間の比較」へと修正した。 <目的>MSCsが放出するエクソソームに関して、含有する成長因子や低酸素培養による機能賦活化を検証すること。これらを心筋幹細胞(CDCs)と比較すること。心不全モデルにエクソソームを投与し、機能改善を検証すること。 <方法・結果>ラビットからMSCsとCDCsを単離し、諸条件を揃えて培養し、エクソソームを回収した。細胞溶解液とエクソソームを解析した。複数の成長因子やエクソソームのマーカーにおいてCDCsはMSCsより高い発現を示した。また、低酸素培養による機能賦活化においてもCDCsは優位だった。計画を変更し、CDCsから精製したエクソソームをマウスの陳旧性心筋梗塞モデルに投与し、2か月後に評価した。コントロール群と比較してエクソソーム群では心機能が保たれていた。 <結論>エクソソームの諸項目について、CDCsはMSCsに対する優位性を示した。CDCsエクソソームの投与は心不全に対する新規治療戦略になると考えられた。
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