昨年度より、カバードステント留置後の遠隔期の経時的な開存性評価において、手技の簡略化や動物愛護の観点から、より低侵襲なレーザードプラ血流計による評価の有用性の検討を開始した。この研究計画の変更に基づき、今年度は、ブタ外腸骨動脈の狭窄モデルにおける、足部のレーザードプラ血流計による評価を合計5匹施行した。ブタ外腸骨動脈のバルーン擦過の2-3週間後に血管造影検査、血管内超音波検査で評価すると、動脈擦過部に狭窄が確認され、また同部の病理組織学的評価でも内膜肥厚が確認できた。また、バルーン擦過2-3週間後に患側および健側の足部をレーザードプラ血流計で計測し、患側/健側比を算出した。その結果、外腸骨動脈狭窄率とレーザードプラ血流計計測値の患側/健側比は負の相関を示し、ブタ足部におけるレーザードプラ血流計による計測が動脈狭窄による血流低下を検出しうることが示された。 また、2019年度に生体吸収性ステントと金属ステントのブタ腸骨動脈留置後24週の遠隔期評価を行い、狭窄率、内腔面積の評価において、生体吸収性ステントは従来の金属ステントとは違う血管壁への反応を有することを示した。今年度はステント留置部血管壁の障害、炎症についての病理組織学的評価(スコアリング)を追加で行った。その結果、金属ステントと比較して、生体吸収性ステントは血管壁障害スコア、炎症スコアともに優位に低値であった。これにより、カバードステント外壁を構成する生体吸収性ステントと、腸骨動脈の接触部における遠隔期の変化について、内膜肥厚による狭窄の程度とともに、血管壁の反応の詳細を評価し得た。
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