研究実績の概要 |
心臓外科手術における人工心肺後凝固障害は血小板機能障害、消費性凝固障害等が複雑に関連して生じる病態であるが、制御困難で心臓外科手術の輸血製剤使用量は極めて多い。これを低減させることは社会的な要求であるが、血液代替物の実用化はひとつの解決策となる可能性がある。血小板代替物であるH12-(ADP)-リ ポソームは、低血小板状態においても有効な止血能をもつことが示されているが、ウサギで人工心肺後凝固障害モデルを作成し、H12-(ADP)-リポソームの有用性 を明らかにし、臨床応用への基礎データを得ることが本研究の目的である。 実験ではNZWウサギ(3kg)を用いて人工心肺後凝固障害モデルを作成し、人工心肺手術終了後、①Platelet poor plasma単独(PPP群)、②Platelet rich plasma単 独(PRP群)、③PPP+H12-(ADP)-リポソーム(PPP+H12群)、④PRP+H12-(ADP)-リポソーム(PRP+H12群)の4群に分け術後投与を行い、血液凝固止血能の評価を行っ た。結果は1)PPP群とPPP+H12群では血液凝固止血能の改善が認められず、新規に血小板が投与される必要があると考えられ、2)PRP群 とPRP+H12群では血小板数、血液凝固能検査、血小板機能検査においては同等の改善がみられたが、出血時間検査においてはPRP+H12群がPRP群を有意に上回る改 善を示し(PRP+H12群:257±121vs PRP群:488±122 sec, p<0.001)、H12-(ADP)-リポソームが組織損傷部位において血小板凝集を促進し、止血血栓形成時間を短 縮するべく作用したと考えられた。今回の検討において、H12-(ADP)-リポソームは人工心肺後凝固障害の制御に有用で、術後血小板輸血量を低減させる可能性が 示唆された。
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