研究課題/領域番号 |
18K16408
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
羽山 陽介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (50802964)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 交感神経 / リモデリング / 線維化 / 拡張障害 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
小児期の手術成績の向上のため近年急増する成人先天性心疾患患者において、成人早期の心不全・不整脈続発が喫緊の問題となっており、手術に伴う心臓分布神経の切断など、成人発症の心疾患とは異なる視点からの病態解明が必要である。本研究は、幼齢期に各種心臓支配神経へ介入・操作した際の、心筋成長への影響や成獣期に続発する心筋障害を解析する、病態解明のための動物研究を行うものである。心臓に分布する各種神経(交感・迷走・求心性)を遺伝学的に自在に操作(除去・刺激他)する技術(心臓神経操作ラット)を用いて前述の問いに対する解析を行っている。 齧歯類の心臓解剖を踏まえ、左右心室に限定した支配神経の全除神経(交感神経、副交感神経、求心性神経)を施行した。心室神経操作後4週間の時点で、心筋菲薄化・心拡大、心外膜側を中心とした心筋の繊維化、心筋繊維化領域に一致する、神経の再支配とともに増加した交感神経線維と周囲の細胞浸潤、外膜側に優位な心筋細胞増殖の減少が観察された。心臓神経の切断・再支配過程が、周囲の心筋構成細胞・組織に影響を及ぼす像が示唆された。 交感神経活動の観察が可能なラットを作製した(DBH-tTA2A-Cre/CAG-LSL-GCaMP6f)。また交感神経刺激アデノウイルス随伴ベクターを作製した(AAV-TH-NaChBac G229A-2A-turboRFP)。前述ラット腎臓に同ベクターを局所注射し、2光子顕微鏡によるCaイメージングを行ったところ、腎臓交感神経が対側に比して251%まで増加し、高血圧が誘導された。またCre組み換え依存的に神経を除去するベクター(AAV-Floxed-DTA)を追加することで、心臓特定領域の除神経が可能である。前述のベクターを用いて時空間特異的な神経操作を行うことで、心筋成長に及ぼす神経系の役割を解析し継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経遺伝子操作技術の実行可能性を確認することで、臨床上の問いに対する解析が可能であることが判明し、解析を開始している。心室筋構成細胞に対しては交感神経の影響が大きいと予想し、まずは交感神経の操作と解析を行い、主に組織変化の観察を行った。 しかし、神経操作に伴う心筋性状や機能変化は微細であり個体差が大きい印象を受けたため、介入を反復し再現性を確認する必要があり、時間を要している。 また研究指導者の異動に伴い、研究環境の変化あり。また次年度は所属研究所の移転が予定され、遺伝子改変動物の管理を含め、環境整備を施行しながら研究を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
組織解析においては、線維芽細胞、血管内皮細胞、自然免疫系(マクロファージ、樹状細胞など)の応答が推察された。自律神経への操作がこれらの細胞群へ及ぼす影響を既存の報告を参考にし解析を行っていく。 上記に加え、既に心筋障害や肥大と関連するとされる複数の因子(ミトコンドリア呼吸鎖、ATP合成、BNP、Caポンプ、カルシニューリン、コラーゲン、各種成長因子)の変化を解析する目的で、PCRアレイによる網羅的な遺伝子分析を追加し、成人期心不全の病態形成へのメカニズムへ迫りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
1万円未満の残額が発生した。次年度の物品費へ繰り越す予定である。
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