研究課題/領域番号 |
18K16415
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
片岡 瑛子 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00746919)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Galectin-3 / RhoA / 低酸素 / 非小細胞肺がん |
研究実績の概要 |
2種類の非小細胞肺がん細胞株において、低酸素培養によりGalectin-3の発現が誘導されることが確認された。Galectin-3の発現をノックダウンすることにより、低酸素で増強する遊走能および浸潤能が有意に抑制された。一方で増殖能に関しては、低酸素培養およびGalectin-3発現抑制により有意な変化は認められなかった。これらの結果より、低酸素で誘導されるGalectin-3は、非小細胞肺がん細胞の遊走および浸潤の促進に重要な役割を担っていると考えられた。次に、Galectin-3がどのような機序で遊走および浸潤に関与しているかを調べるために、RhoAに着目した。低酸素培養により、RhoAの活性化が促進されるのに対して、Galectin-3の発現をノックダウンするとRhoAの活性化が有意に抑制された。さらに細胞内のRhoAの分布をみると、低酸素により細胞膜のRhoAの発現が増強し、Galectin-3の発現を抑制することで細胞膜のRhoAの発現が有意に減少することから、Galectin-3はRhoAの細胞膜への移動または固定に関与している可能性が示唆された。また、ヒト非小細胞肺がん組織における検討では、Galectin-3の発現と低酸素分子マーカーであるPDK-1の発現は相関し、Galectin-3の発現は、脈管浸潤および術後再発に関連していることが明らかになった。以上より、非小細胞肺がんにおいて、低酸素で誘導されるGalectin-3は細胞膜へのRhoAの発現増強を介して、腫瘍細胞の遊走・浸潤を促進し、術後再発に寄与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画通り、非小細胞肺がん細胞株を用いて、低酸素培養下で発現が誘導されるGalectin-3が、細胞膜のRhoAの発現増強を介して、遊走および浸潤に関与していることなどを明らかにした。また、ヒト非小細胞肺がん組織における低酸素分子マーカーPDK-1とGalectin-3の発現のデータも順調に得られていることから、本課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、ヒト非小細胞肺がん組織におけるGalectin-3と低酸素分子マーカーPDK-1の発現のデータから臨床病理学的因子や予後との関連性などの解析をすすめる。また、低酸素で誘導されるGalectin-3が直接的にRhoAと相互作用を介してRhoAの活性化に関与しているのかどうかについて検討を進める。担がんマウスモデルを用いて、Galectin-3の抗腫瘍効果についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や実験消耗品の物品費を必要最低限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が生じた。次年度で行う実験の試薬や実験消耗品に使用する予定である。
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