研究課題
肺移植では、未だドナー不足は非常に深刻な問題である。本研究では心停止ドナー肺の使用に注目する。心停止ドナー肺の使用には、虚血再灌流障害を予防しうるより優れた臓器保存による評価と治療が必要となる。体外肺灌流保存は、正常体温(37℃)下のより生理的環境に近い、すなわち換気と灌流が維持された状態で臓器を保存することにより、体外での移植前の肺機能評価を可能としている。さらに近年、EVLPがマージナルドナー肺の移植前治療のプラットフォームとして有効であることが動物実験にて証明されており、体外でのドナー肺のテーラーメイド治療に注目が集まっている。肝細胞増殖因子は抗アポトーシス作用、血管増生、抗炎症作用、免疫調節作用などを有する多機能性因子であり、虚血により障害を受けたドナー肺を移植前に修復する、もしくは移植後の虚血再灌流傷害を予防しうる最重要な因子になりうる。小動物での心停止ドナー肺に対するEVLPを確立した。実験はルイスラット雄を使用し行った。心室細動にて心停止を導入し、心停止90分後に両肺ブロックを摘出。以後、isolated rat lung perfusion modelを用い、60分間のEVLPを安定して施行できる設定を確認した。灌流液としてSTEEN液を用い、流量10-11 ml/min、chamber pressure -8, -4 cmH2O、respiratory rate 60/minの設定でEVLPを行なった。EVLP中の肺生理データはいずれも安定していた。大動物でのEVLPを確立した。EVLP回路を作成後、ビーグル犬を用い、トロント大学のプトロコールを基に、常温(37度)での換気、灌流保存を8時間行った。ドナー肺は肺水腫をきたすことなく、EVLP中の肺生理データ(気道内圧、肺コンプライアンス、肺血管抵抗)は8時間安定していた。
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General Thoracic and Cardiovascular Surgery
巻: 70 ページ: 406-412
10.1007/s11748-022-01774-x
巻: 69 ページ: 625~630
10.1007/s11748-021-01609-1