研究課題
慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は非可逆性の慢性進行性の肺疾患で、患者数は増加しているが臓器移植に代わる根治的な治療法がなく、新たな再生医療の開発が望まれている。今回申請者は脂肪組織由来幹細胞 (adipose tissue-derived stem cells; ADSCs) を用いた肺再生を目指し、ADSCs から肺胞上皮細胞への分化誘導、 COPD に対する ADSCs 補充療法による肺再生医療の研究を行った。まず、in vitro でⅡ型肺上皮細胞への分化を含む多分化能を検討し、2通りのプロトコールでADSCsから Ⅱ型肺胞上皮細胞への分化誘導が可能であることを示した。また、エラスターゼを用いて肺気腫モデルを作成し、ADSCs を尾静脈から投与して COPD に対する効果を検討した。小動物用のスパイロメトリーや超偏極 129Xe MRI を使用して評価し、ADSCs を投与した群では、非投与群と比較して、肺コンプライアンスの改善、ガス交換能の改善による換気能の上昇などを認めた。組織学的な改善のみならず、呼吸機能の点でも改善することを明らかにした。さらに、肺気腫モデルマウスに投与した ADSCs が気腫肺に集積し、集積した ADSC の一部にTTF-1やⅡ型肺胞上皮細胞マーカーであるSPB、SPC陽性の細胞を認め、集積したADSCsの一部がⅡ型肺胞上皮細胞へ分化することを示した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Stem Cells International
巻: Volume 2019 ページ: -
10.1155/2019/5179172