研究実績の概要 |
本研究では、縦隔腫瘍の中で最も発生頻度の高い胸腺上皮性腫瘍における免疫療法の可能性について腫瘍内T細胞を詳細に解析することにより追究した。胸腺上皮性腫瘍は希少疾患であり、標準治療法が確立されていないのが現状である。特に、悪性度の高い組織型では発見時には進行期となり切除不能となる症例が多い。そこで、免疫治療が有効となるか否かについての検討を行った。 これまでに胸腺上皮性腫瘍の切除検体60例以上を用いて腫瘍内T細胞の免疫プロファイルおよび腫瘍免疫活性について詳細な解析を行った。研究結果からは、胸腺上皮性腫瘍の病理組織型毎にT細胞表面上の免疫チェックポイント分子の発現率が異なる知見が得られた。T細胞の抑制性マーカーであるTim-3や制御性T細胞の割合が悪性度の高い組織型になる程、高くなる傾向が認められた。一方で、PD-1の発現と組織型には関連は認められなかった。また、腫瘍細胞障害活性やサイトカイン産生能(IFN-g, TNF-a, IL-2)についても組織型毎に違いが観察され、悪性度が高い腫瘍内のT細胞では高いサイトカイン産生能が認められた。胸腺上皮性腫瘍の病理組織型による免疫プロファイルと腫瘍免疫活性に関連が認められ、特に胸腺腫B3および胸腺癌では、サイトカイン産生能や細胞障害活性が高く、免疫療法が有効となる可能性を示唆する結果が得られている。 今後、抗PD-1抗体を用いて胸腺上皮性腫瘍の組織型毎にT細胞賦活効果を確認していく予定である。
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