研究課題
ブタ肺脂肪塞栓症モデルを用いて、肺保存液還流法を改良すること(逆行性温還流)で脂肪塞栓の除去率に変化があるかどうかを検討した。通常の逆行性還流法(Cold群)では、脂肪の回収率は投与量のわずか8%(±1.4%)であったのに対し、新還流法(Warm群)では25%(±3.2%)の回収率であった。また、オイルレッドO染色による摘出病理標本においては、Warm群で脂肪の残存が少なく、Warm群において顕微鏡的にも脂肪の除去が多くされていることが確認された。一方で、Warm群においても投与した脂肪の約75%は肺内に残存していることがわかった。また、Cold/Warm逆行性還流後に再還流を行い虚血再還流障害についても検討した。結果としては両群ともに大差なかった。前年度に得た上記の結果については別記の論文を作成・投稿し、GTCS上で公表した。昨年度後半より行っていた肺移植を引き続き行った。まずは肺移植技術を安定させることを優先し健常ブタによる肺移植を行っていたが、肺移植技術の習得に時間を要した。特に、肺静脈吻合が最も難しく、肺静脈周囲の剥離範囲や吻合部cuffの長さなどに留意しながら経験を蓄積した。その後、コントロール群(脂肪塞栓Cold群)の肺移植を開始したが、時間の制約により実験を完遂できたものは2例のみの実施となった。肺移植後の6時間の血液ガス分析の推移では、健常ブタと比較して酸素化の低下はほとんど認められなかった。塞栓による血管抵抗の増加によって、自己肺(右肺)への血流のシフトで酸素化が代償されてている可能性が考えられた。そのため、今後の実験では肺移植前後に左右の血流量などを超音波で測定することを検討している。
すべて 2020
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Gen Thorac Cardiovasc Surg
巻: 68(4) ページ: 363-369
10.1007/s11748-019-01245-w