肺切除術における肺瘻部位の同定方法は、液体内でバブルを観察するシーリングテストが唯一の方法である。しかし肺の換気をおこなう必要があるため、近年肺手術の標準術式となっている胸腔鏡手術では視野が制限されるというデメリットがある。胸腔鏡手術にも適した新たな肺瘻部位同定方法があれば、術後肺瘻を予防できる可能性がある。 我々が開発したIndocyanine green (ICG)のAerosolを用いた肺瘻部位同定方法は、蛍光色素であるICGをジェットネブライザーでAerosolとして気道内に投与することにより、気流の発生している肺瘻部位に集積・沈着したICGが近赤外光胸腔鏡により観察可能とする手法である。この手法は肺を虚脱させた状態で肺瘻部位の観察が可能で、ICGの集積が時間経過で消退しないというメリットがある。 本手法の臨床応用にむけてイヌ胸膜損傷モデルを作成して実験をおこなった。合計6匹のイヌに計25箇所の胸膜損傷を作成し、ICG2.5mg/mlをAerosolとして経気管的に投与した。25箇所のうち1箇所をのぞく24箇所は赤外光カメラで同定が可能であった。また胸膜損傷部位が近赤外光カメラ下に観察可能となるまでの時間はICG Aerosolを投与開始して13.8秒(95%CI 7.37-17.1)であった。本実験の結果から胸膜損傷部位の観察に必要なICG Aerosolの量は非常に少量であると考察する。 近年赤外光胸腔鏡は多数の施設に普及してきており、本実験の手法をヒトに応用可能な手技として確立すれば、胸腔鏡手術におけるリークテスト中の視野の制限を解決できる、新たな肺瘻部位同定方法となる可能性がある。
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