放射線誘発線維症(RIF)は、放射線治療によっておこる重篤な合併症であり、我々はこれまでにRIFプロセスに関する遺伝子発現メカニズムの解析を進めている。 細胞外マトリックスの主成分であるコラーゲンの発現調整に重要な因子である結合組織因子CTGFを研究対象とし、本研究では転写後のCTGFの発現メカニズムについて調べることを研究目的とする。これまでに、非コードRNAであり転写後の遺伝子発現を負に制御するmiRNAとして、miR-26が転写後レベルでCTGFおよびコラーゲンの発現を負に制御することを明らかにした。さらに、転写後のRIF発現メカニズムについて知見を得るために、miRNAと競合して転写後の遺伝子発現調節に関与するlncRNAに着目し、RIFに関与するlncRNAとしてlncRNA-X、そして競合しうるmiRNAとしてmiR-Aを見出した。本年度はRIFプロセスにおけるlncRNA-Xと競合するmiR-Aの相互作用について調べ、以下の結論を得た。まず、ルシフェラーゼアッセイによりlncRNA-XとmiR-Aの結合について調べた結果、lncRNA-Xが直接miR-Aと結合することが分かった。また、miR-Aの機能を調べるために過剰発現実験および阻害実験を行った結果、miR-AがlncRNA-Xの発現を負に制御していることが分かった。さらに、CTGFへのlncRNA-XおよびmiR-Aの影響を調べた結果、lncRNA-Xの過剰発現によりCTGFの発現が増加した一方、miR-Aの過剰発現ではCTGFの発現は減少した。これらの結果により、lncRNA-XがmiR-Aと相互作用してCTGFの発現を調整し、放射線によるコラーゲン発現増加に関与することが示唆される。
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