研究実績の概要 |
本邦において、肺癌は最も死亡数の多い癌である。2017 年の厚生労働省の人口動態調査死亡統計によると、男性は52,430 人、女性は21,408 人が肺癌で命を失っている。肺癌全体の5年生存率は44%とされているが、IA 期が79%と良好であるのに対し、IIA 期が47%、IIIA 期が29%、IV 期が6%と進行に伴い大きな差が生まれる。早期発見できれば良好な治療成績が期待できる反面、大部分は進行した状態で発見され、その治療成績は芳しくないというのが現状である。従って、肺癌患者の予後を飛躍的に延長させるためには、転移、再発や抗がん剤耐性といった癌の悪性化形質に対する治療戦略を練る必要がある。 近年、癌周囲の間質 と癌細胞それぞれにおいて発現する分子や、分泌される代謝物のやり取りの結果として、癌進展が亢進することが癌間質相互作用として注 目されている。本邦で最も多い癌死因である肺癌において、申請者らはペリオスチンという骨、血管形成に重要な分子が、間質に強く発現していること、ペリオ スチンの発現が低いとたとえリンパ節転移陽性例であっても極めて予後良好であり、発現を消失させたマウスでは転移が縮小することを明らかにしている。そこ で、本研究はペリオスチンが癌間質相互作用を制御している重要な因子と考え、それを標的とした治療法確立のため, ペリオスチンが促進する肺癌悪性化機構に 分子、代謝、免疫の面からアプローチし、抗腫瘍効果をin vivo にて検証することをさらなる目的とした。 本年度はオルガノイドやスフェア状態で培養された肺癌細胞を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行った。有意に変動する遺伝子を同定し、それをノックダウンし、オルガノイド・スフェア形成能を比較することで機能性かどうかの検討を行った。
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