当初予定していたプロポフォール・セボフルラン・デスフルランの誘発筋電図・運動誘発電位への影響についての二重盲検無作為化比較対照試験は当院倫理委員会の承認が得られなかった。遅滞なく臨床研究を行うために、研究計画の変更を余儀なくされた。セボフルラン・デスフルラン等の揮発性吸入麻酔薬の誘発筋電図・運動誘発電位への影響に関しては、臨床研究を行うことが困難であると予想された。臨床上比較的高頻度で使用されているプロポフォールの運動誘発電位振幅抑制の機序を追求するだけでも、臨床的意義はあると考えられたため、予定を変更して、倫理委員会の承認後にプロポフォールの誘発筋電図、運動誘発電位への影響についての前後比較試験を開始した。主要評価項目をプロポフォールの増量に対しての誘発筋電図であるH反射振幅の抑制に設定し、副次評価項目として、運動誘発電位やM波・F波の振幅ならびに潜時を評価することとした。結果、H反射振幅の有意な抑制は認めず、一方、運動誘発電位振幅は有意な抑制を認めた。運動系は単シナプス経路だけではなく、多シナプス経路を経由することが知られているため、本研究結果から、プロポフォールの運動誘発電位振幅抑制効果は、脊髄前角細胞への影響だけではなく、より上位の複数のシナプス抑制効果が、影響していると考えられた。 また、基礎研究に関しても臨床研究と比較する目的でプロポフォール・デスフルラン2剤からプロポフォール単剤へ変更したが、実験系の確立には至らなかった。
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