研究実績の概要 |
高換気量・高気道内圧による人工呼吸は、人工呼吸誘発肺障害(Ventilator Induced Lung Injury, VILI)を引き起こす。敗血症では、全身性炎症を呈し、血管透過性の亢進により ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)を発症するとともに、肺血管抵抗が上昇し、結果として肺高血圧にいたる。本研究では、実験的敗血症モデルラットに対して、高一回換気量の機械的人工呼吸によって VILI を誘発させ、TRPV4 阻害薬(HC-067047)の投与により肺障害が軽減するかを確認した。全身麻酔下にて、Cecal Ligation and Pucture (CLP) による敗血症ラットモデルを作成し、TRPV4 阻害薬を投与した後、35ml/kg の高一回換気量、ルームエアーにて 3 時間の人工呼吸管理を行い、肺を損傷させた上で、TRPV4 阻害薬の効果を確認した。肺組織の炎症性サイトカイン IL-6、 IL-10、ケモカイン CXCL1、 CXCL2、CCL2 の mRNA 発現量において、非投与群と比較して、TRPV4 阻害薬投与群では有意な低下がみられた。肺組織の肺水分量では、有意ではないものの、投与群で減少傾向にあることが確認できた。これらの結果は、TRPV4 阻害薬が一定の効果をもたらしたものと考えられるが、引き続き今後の検討が必要である。
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