研究課題
術後認知機能障害(POCD)発症患者は、術後入院期間が長く、長期生存率も低いことが知られている。麻酔薬という比較的短時間の一見可逆的な脳への作用や手術侵襲が、どのようなメカニズムで長期にわたり障害を及ぼすのか不明である。この重要な未決の問いに対し、ヒト脳脊髄液(CSF)という貴重な臨床サンプルを使用し、POCDに関連するCSF内タンパク質総体の量的変動、構造変化を見出すことでPOCDの分子メカニズムに迫った。特に血液と比してタンパク濃度が低いCSFにおいて、効率的にプロテオーム解析をする方法を確立した。具体的には、限外濾過およびabundant proteinsの吸着除去を行うことにより、CSFにおいても血液と比して少なくないタンパクを質量分析で検出できることがわかった。しかし、従来のiTRAQ法では同定し相対定量できるタンパクが各ラン毎に100個程度に限られていた。ランによりオーバーラップするタンパクも少なく再現性が課題となった。そこで、三重大学に新規納入された、SCIEX社のTripleTOF6600+システムを用いて質量分析を行った。最新の質量分析機を用いて、まず貴重なCSF検体を用いて、DDA(data dependent acquisition)法にてライブラリーを作成した。作成したライブラリーを用いてDIA(data independent acquisition)法であるSWATH-MS(Sequential Windowed Acquisition of All Theoretical Fragment Ion Mass Spectra)法にて網羅的にタンパクの相対定量を行った。現在、得られた結果を解析中で、臨床でのPOCDの発症と、CSFタンパクの変動の関連を見出す予定である。
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