本研究ではマウスを個体レベルで低酸素に暴露して、治療薬として化学シャペロンを投与し小胞体機能を補完することによる虚血低酸素神経障害の予防、治療法の開発を検討する。また、変異KDEL受容体トランスジェニックマウス、変異Bi Pノックインマウスという小胞体機能障害マウスを用い、新生児期の虚血低酸素神経障害に対する小胞体分子シャペロンの機能を明らかにすることが目的であった。 当初の予定とは異なるが、オピオイド誘発性疼痛過敏(opioid induced hyperalgesia:OIH)に対する小胞体ストレスの影響について実験を行った。野生型マウスにレミフェンタニルを間欠的に投与することによって、疼痛過敏モデルマウスを作製した。作製した疼痛過敏モデルマウスに、Sodium phenylbutyrate (4-PBA)やTauroursodeoxycholic acid (TUDCA)といった化学シャペロンを投与することによって、疼痛過敏を抑制する可能性が示唆された。同様の実験を変異BiPノックインマウスでも行い、効果を検証した。 また、培養細胞でも実験を行い、オピオイド受容体の発現、オピオイド鎮痛効果、下行性疼痛抑制系の異常について組織学的、分子生物学的に検証し、小胞体化学シャペロンの治療効果を検証した。上記と並行して、吸入麻酔薬による神経保護作用および神経毒性と小胞体ストレスについても研究を行い、論文として公表した。
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