研究課題/領域番号 |
18K16488
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古賀 資和 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (00637233)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | L-DOPA / GPR143 / 肺高血圧 / モノクロタリン |
研究実績の概要 |
本研究室は長年、L-DOPAに特異的な薬理作用があること、特定の刺激に応じて分泌がなされることを報告してきた。この様な 他の神経伝達物質に類似の特性を持つものの、その全貌は未解明である。このような発見とその後の研究は、国内外に類を見な いものであり、本研究の学術的独自性、創造性は高い。 今回の研究は脳内でのGPR143の発現分布のパターンがドパミン神経系に類似している点(未発表データ)や脳幹における血圧 下降、血管や血圧の制御に対する応答の報告より着想し、L-DOPA/GPR143が単一臓器にとどまらない生体応答を修飾する可能性 を見出し、証明することを目的とする。 今年度は、GPR143のシグナルが、肺血管収縮に関与していることを肺血管摘出標本を用いて検証し、血管収縮を正に収縮し血管収縮を増強することがわかった。この結果はマウス心血管系におけるGPR143のシグナルの関与を報告した我々の過去の検討と矛盾しなかった。 そこで、近年新たに発見された遺伝子修飾技術である、CRISPR/cas9システムにに着目しラットの受精卵操作の技術を持つ研究協力者のもとにGPR143-ノックアウトラットの作成を試みた。得られたラットの表現型の解析を始めたところ、GPR143の存在がフェニレフリン誘発肺血管収縮になんらかの修飾を与えている可能性説明できるような所見が得られた。今後、肺高血圧モデル、大量出血モデルなど、病態モデルを作成し、これらの病態におけるGPR143の関与について検証していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPR143-ノックアウトラットの作成は順調に行われ、繁殖可能な状況となっているが、GPR-143が肺血管収縮に関与している可能性を検証した先行研究課題を優先して解決することが、この課題の方向性を決めると考えているため、この課題へのエフォートをすこし下げた結果、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度までの研究で得られた肺血管におけるL-DOPAの関与に関する所見から、L-DOPAは肺血管を含む循環器系への関与が示唆された。そこで、この肺血管におけるGPR143シグナルの関与を明らかにすることで、本研究課題に方向性を決める初期の探索に要する時間を減じ、ひいては、遅れを取り戻すことが可能と考えている。また、この進捗の遅れを取り戻すため、学内の他の研究室の教員や大学院生との協力体制を構築し、課題検証の推進を図ることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
CRISPR/cas9システムを利用したGPR143ノックアウトラットの作成のために予算を計上していたが、他の研究支援を得ることができたため、その作成費に充当する予算が使用されず、申請金額との差が所持た。一方で、評価検証のために必要な生理学的測定の装置(AD Instrument社 Lab Chartなど)は耐用年数が近づいており、不意な故障なども想定されるため、これらの機器の整備点検、更新などにあて、安定した研究環境が維持できるようにする予定である。
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