研究課題
若手研究
今回の研究で全身麻酔薬による短期記憶障害の作用機序として、海馬抑制性神経細胞に分布するCRAC (Calcium-release activated calcium)チャネルに重要な働きがある事が示唆された。海馬CA1領域の網状分子層と放射状層との境界に存在する抑制性神経細胞でのCRACチャネルがセボフルラン麻酔による活動電位の発生に関わっており、そこでのCRACチャネルの不活性化が活動電位の発生を抑制することで、セボフルラン麻酔による記憶障害からの早期回復を促している可能性が考えられた。
麻酔
全身麻酔薬の作用機序は未だ不明な点も多いが、中でも全身麻酔後の短期記憶障害は術後せん妄や認知機能障害との関わりが示唆されているため、臨床上非常に重要なテーマである。今回、我々の研究からセボフルラン麻酔による短期記憶障害の作用機序として、海馬抑制性神経細胞におけるCRACチャネルが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。さらなる詳細な作用機序等が解明されれば、現在米国で臨床試験がなされているCRACチャネル阻害薬の臨床応用等、今後の発展が期待される。