研究課題/領域番号 |
18K16491
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松浦 正 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90619793)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 局所麻酔薬 / 心肥大 / 心毒性 / パッチクランプ |
研究実績の概要 |
局所麻酔薬の心毒性が肥大心ではどのように変化しているかについて、SDラットを用いたin vivoとin vitroの実験を行う方針とした。まず心肥大モデルラットの作成については、3週齢のラットを全身麻酔下に気管切開し人工呼吸を行う。その後、第二肋間で左開胸して左鎖骨下動脈分岐直後に鈍的にした22G針を添え木にして大動脈の縮窄を作成する。胸部閉創後に気管切開を閉じて麻酔から覚醒させて、7週齢で実験を行った。対象群は、同じ行程の手術を行い大動脈の縮窄は施行しなかった。実験開始から20匹を終了した時点で7週齢での体重には両群間で差はなく、心臓重量は対象群1.4gに対して心肥大群2.0gと肥大を認めた。 In vivoの実験では、全身麻酔下に気管切開し人工呼吸を行った。頚動脈と尾静脈にカテーテルを挿入し、ブピバカインを持続静脈投与した。評価項目は、平均血圧、心拍数、心電図上のQRS幅、心停止までの時間に加えて心停止時のブピバカインの血中濃度を測定した。測定中は筋電図の混入を防ぐために筋弛緩薬を投与した。心停止までの時間は、心肥大モデルで有意に短かかった。またブピバカインの総投与量は心肥大モデルで有意に少なく、心停止時の血中濃度は有意に低かった。これらの結果から、心肥大モデルではブピバカインへの感受性が高く、心毒性を来しやすい可能性が示唆された。 これらの結果をまとめて、2019年5月31日に行われる第66回日本麻酔科学会学術集会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
心肥大モデルの作成を確立することから取り掛かった。試行錯誤を繰り返したが、安定してモデルが作成するまでに要した期間はおそよ6ヶ月で、当初の計画よりも数ヶ月早く進行した。そしてin vivoの実験データ蓄積を進めることができた。次年度以降に計画していた心停止時の血中濃度測定を前倒して行う必要が生じた。そのため、助成金を前倒し請求させていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、心筋細胞の単離を行い、単離細胞を用いたパッチクランプを行う予定である。正常心からの細胞単離については経験があるが、肥大心からの単離は初めての行程なので試行錯誤が必要になると予想される。単離のための酵素の濃度や灌流時間を工夫して行うことで対応できると考えている。パッチクランプでは、局所麻酔薬の主作用チャネルであるNa+チャネルの記録を行う。心肥大モデルでは局所麻酔薬のNa+チャネル抑制作用がどのように変化しているのかを検討し、電位プロトコールを組み合わせることによって機序解明にも繋げていくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が当初の計画以上に順調に進展した。計画では2年次以降に予定していた薬物の血中濃度測定を当該年度に行うことになったため、助成金の前倒し請求が必要となった。そのため当該助成金が生じた。研究計画全体での実施予定内容には変更がないため、計画は遂行できると考えている。
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