研究課題/領域番号 |
18K16491
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松浦 正 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90619793)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 局所麻酔薬 / パッチクランプ / 心肥大 / 心毒性 |
研究実績の概要 |
心肥大モデルラットおよびシャムラットから心筋細胞を単離し、単離細胞を用いてパッチクランプを行った。心筋細胞のNa電流を記録し、これに対するブピバカインの抑制作用について心肥大ラットとシャムラットで比較検討した。次に、細胞膜をほとんど通過しないQX-314を用いてNa電流抑制について検討した。 単離した細胞の免疫染色を行い、TRPC3チャネルの発現・局在を比較した。心肥大ラットの心筋細胞では、細胞膜辺縁の分布が多いことが確認された。 これまでの実験結果から、心肥大モデルラットではブピバカインによる心筋Naチャネル抑制が強くなっており、その機序として心肥大に伴って増加した細胞膜上のTRPC3チャネルを介して細胞外のブピバカインが細胞内に移行することが示唆された。 さらに、心肥大がない状態であってもTRPCチャネルが細胞膜で増加すると、ブピバカインの心筋Naチャネル抑制作用が強くなるかについて検討を行った。HEK-293T細胞に遺伝子導入を行い、Nav1.5のみを発現させたものとNav1.5とTRPC3を共発現させたものを作成した。それぞれでブピバカインによるNa電流抑制作用を測定したところ、ブピバカインのみでは、抑制作用に差はなかったが、TRPC3作動薬のOAGを共投与すると、TRPC3を共発現させた細胞ではブピバカインによる抑制作用が強くなった。このことから、心肥大という現象と独立してTRPC3を介したブピバカインの細胞内移行によって、その作用は促進されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究結果をまとめて英文学術誌に投稿して受理された。研究計画に記載されている摘出心臓を用いた還流実験が実施できていない。摘出心臓を用いた研究では、心臓のみを標的とした詳細で定量的な検討ができるため、得られたデータをこれまでの研究結果に追加することで、さらにエビデンスレベルの高い報告となると考えている。現在、還流実験の精度を向上させる調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、研究活動を制限された期間もあったため、系統的なデータ蓄積ができなかった。今後は、摘出心臓を用いた還流実験を行って、不足しているデータを補足することを目標として、研究課題の最終結果報告につなげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、コロナ禍の影響で研究室の使用が制限されたため、予定していた実験を遂行することができなかった。次年度については、研究室が使用できれば計画通りの実験を行う予定としている。
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