本研究では、痛みを感じないTGマウスを使用できることが最大の特徴である。一般的な遺伝子の機能解析手法としては、ノックアウト(KO)など遺伝子を操作してその表現型を調べる逆遺伝学が主要な方法であるが、本研究で用いた手法は、変異マウスを用いて表現型からその原因となる遺伝子を探りあてる順遺伝学である。詳細な検討の結果、疼痛鈍麻の表現型を示すTGマウスは、外来遺伝子が8番染色体に挿入され、挿入部位近傍の3つの遺伝子制御が破綻していることを明らかにした。興味深いのは、これらの候補因子は全てこれまで報告のある疼痛関連因子ではないことである。新規疼痛関連遺伝子を同定できたことは学術的に意義あるものである。
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