本研究では、健常人とPHN患者で脳の安静時機能的結合を比較し、PHN患者に特徴的な所見を明らかにした。加えて、PHN患者の各種疼痛関連パラメーターと脳機能的結合の特徴的所見の相関性を明らかにするとともに、鎮痛治療介入の前後で変化を明らかにした。以上により、安静時脳の機能的結合に注目してPHNの脳内機序を明らかにするとともに、安静時脳の機能的結合定量化がPHNの程度や治療効果のバイオマーカーとなりうるか検証することを目的とした。 当初は運動などのタスクを負荷させたときに脳機能がどのように変化するかを観察するために用いられてきたfMRIであるが、近年では、安静時のfMRI信号で0.1Hz以下の低周波成分を解析し、脳部位間の機能的結合を検出する手法が注目されている。これまでに、感覚などの機能ごとに、異なる複数の脳部位間で機能的結合、すなわちネットワークを形成することが分かっている。これにより、様々な病態における脳内ネットワークの異常が明らかするとともに、その病態機序解明が明らかになってきた。我々が進めてきた研究成果から、安静時fMRIによる脳内の機能的結合からPHN特有の脳内の機能的変化を観察することができた。 その研究から、我々は以下のような結果を得た。 (1)fMRIによる安静時の脳機能的結合を解析することで、mPFCと右海馬との間でPHN患者に特有な機能的結合の変化を見出した。 (2)この、mPFCと右海馬の機能的結合の変化は、PHN患者の主観的な疼痛関連指標と関連していた。
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