研究実績の概要 |
視床下部に存在するDA神経細胞群(A11-15)の中で、弓状核(A12)に起始するDA神経系は下垂体前葉機能を調節ことが指摘され、A11領域DA神経系は脊髄へ投射 する唯一の経路として痛覚に関与する可能性が示唆されている。一方、DA神経細胞に関し、これまでは均質と考えられて来た黒質緻密帯や腹側被蓋野のDAニュー ロンがグルタミン酸(Glu)受容体、GABA受容体、DA受容体や各種トランスポーターを不均質に発現し、その発現が領域ごとに差異があることから、それぞれ異 なる働きを持つと考えられるようになってきた。(Li et al. Brain Structure Function, 2012)この事実は治療の有効性の差異に繋がると推察されている。DA 神経細胞の不均一性から、A11細胞においても受容体分布の差異がみられる可能性があり、A11領域の制御機構の解明を進めることがRLSなどの治療困難な機能性 身体疾患の病態解明と新たな治療法の確立に繋がると考えられた。 感覚異常の抑制経路に関しては両側性支配が強いとされる三叉神経にもA11は投射していることより、A11の機能異常は身体正中線上の痛みに関与していると推測 され、治療困難な正中領域疼痛へのA11の調節機構の関与が示唆される。さらに、脳内DAの制御にはエストロゲンが関与していることも知られていることから、 性差が優位であれば壮高年女性に多くみられる会陰部痛や舌痛症などの正中線上、または両側対称性に発症する難治性疼痛の原因解明や治療法の提案に貢献でき る可能性がある。 今回、A11領域の免疫染色およびin situ hybridizationを行った。存在する細胞の一種の神経細胞が様々な分子と共発現しており、A11における神経細胞調節を行っている可能性が考えられる。
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