本研究は神経組織特異的に蛍光タンパクを発現するthy1-YFPマウスでがんの骨転移モデルを作製し、がん組織に分布する神経線維の発芽と神経腫の形成における神経栄養因子の関与、MMP-9をはじめとする遺伝子のがん組織、後根神経節と脊髄における発現、さらにがん性疼痛の発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。がん組織で遊離される神経栄養因子が一次求心性線維を逆行性軸索輸送される点に着目し、坐骨神経を切断してその輸送を中断して、神経栄養因子の作用部位をがん組織か後根神経節かを明らかにし、末梢組織からは複数の神経栄養因子が遊離されるため、それらの抗体を投与することにより関与する神経栄養因子を同定する。また、後根神経節細胞の生存維持、神経突起の伸長は異なる神経栄養因子に依存するので、どのように影響されるのかを解明する。我々は、がん骨転移モデルにおいて、腫瘍接種3日目に処置側脛骨で腫瘍接種7日目に脊髄後角でMMP-9の上昇が見られ、MMP-9阻害薬の腹腔内、髄腔内投与で疼痛軽減を認め、がん性疼痛の発症メカニズムにおいて、MMP-9が関与していることを明らかにした(Nakao K et al.Evid Based Complement AlternatMed.2019.)。現在、がん性痛におけるMMP-9の役割を検討中である。
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