研究課題/領域番号 |
18K16501
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
岡本 明久 関西医科大学, 医学部, 研究員 (50509479)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プロポフォール / プロポフォール注入症候群 / ROS / ミトコンドリア / 低酸素誘導性因子1 / HIF-1 / 代謝 |
研究実績の概要 |
プロポフォール注入症候群の病態の分子機序の解明を目指してプロポフォールの標的器官としてミトコンドリアを想定し,細胞内エネルギー代謝,ROS産生,細胞死などの観点からプロポフォールの毒性発現の機序解明を目的とする研究を遂行した。 初年度以下の研究成果を得た。 様々なミトコンドリアDNA変異を持つtransmitochondrial cybrids細胞を用い,ミトコンドリア機能異常とプロポフォールの細胞毒性の関連を明らかにした。次にVHL(Von Hippel-Lindau; フォンヒッペル・リンドウ)遺伝子が欠損していて転写因子hypoxia-inducible factorが通常状態でも活性化しているという性質を持つ腎臓癌由来の細胞株RCC4細胞とRCC4細胞に遺伝子工学的にVHLを導入した細胞(RCC4-VHL細胞)をもちいてプロポフォール毒性を比較したところRCC4細胞ではプロポフォールによる細胞死が起こりにくいことを明らかにした。この現象の分子生物学的な機序を検討したところRCC4細胞では低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor 1、以下「HIF-1」)が持続的に活性化している事により細胞ではGLUT1・LDHAの働きにより、グルコースがピルビン酸→乳酸へと代謝される解糖系が優位な代謝経路に変換されている事、さらにまたPDK1の働きによりピルビン酸がミトコンドリアに運ばれアセチルCoAに変換される経路が抑制されるため、ミトコンドリア呼吸鎖への電子の供給が抑制されている事を見いだした。 発症メカニズムの基盤としてプロポフォールがミトコンドリア機能の障害をもたらしその結果発生する活性酸素種(ROS)が細胞死をもたらす現象を見出し報告していたが、今回の研究でHIF-1の遺伝子工学的または薬理学的な人為的な活性化により細胞死を低減し得ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに研究が進行して論文の公刊を果たした。
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今後の研究の推進方策 |
プロポフォールの細胞毒性の発揮においてミトコンドリアの関与が重要である事があきらかになった。今後はプロポフォールの標的分子を同定してさらに詳細な分子機序の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行にあたり必要に応じて無駄のない研究費の執行に務めたため、当初の見込み額と執行額に差額が生じたが、研究計画に大きな変更はなく当初の予定通りに研究を遂行し、適切な研究費の使用に務める。
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