研究課題
静脈麻酔薬プロポフォールの作用機序について、γアミノ酪酸(γaminobutyric acid:GABA)A受容体サブユニットとの関係を示す報告は多く存在する。しかしながら、GABAA受容体の発現はどのような分子メカニズムで調節され、それがプロポフォールによる麻酔作用とどのように関わっているかについては未だに不明な点が多い。本研究は細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular signal regulated kinase: ERK)とGABAA受容体発現の関係に注目し、ERKがGABAA受容体の発現、もしくは活性の制御に関連しているのではないかという仮説のもと研究を行っている。以前に防衛医科大学校生化学講座の佐藤泰司らは東京都健康長寿医療センターの遠藤昌吾と共同でERK2標的遺伝子改変マウスを作出した(Satoh et al., 2011, J. Neurosci)。本研究ではこれらのマウスを用いて、ERKとGABAA受容体の関係について解析を行ってきた。これらのマウスの海馬由来神経細胞初代培養細胞を採取し、初代培養神経細胞を得た後、培養15日目に細胞を回収した。これらのサンプルに対し、様々なGABAA受容体サブユニットに対する抗体を用いたウエスタンブロット法により、GABAA受容体サブユニットの発現を解析してきたた。その結果、ERK2遺伝子の欠損により、いくつかのGABAA受容体サブユニットの発現が野生型マウスと比較して変化していることを発見した。さらに、これらの初代培養神経細胞において、各種GABAA受容体サブユニットの発現を共焦点レーザー顕微鏡で可視化する試みを行っており、ERKによるGABAA受容体サブユニットの発現の制御メカニズムを詳細に観察する予定である。
3: やや遅れている
現在まで海馬初代培養細胞におけるERKとGABA受容体の動態を共焦点顕微鏡を用いて可視化しようと試みている。この点に手間取っており、研究がやや遅れている。しかしながら解決の見込みが立ちそうなので、今後は研究を加速していきたい。
なるべく早く、共焦点顕微鏡を用いてGABA受容体の動態を可視化する技術を確立したい。さらに電気生理学的手法も取り入れ、さまざまな手法を取り入れて包括的に仮説の検証を行っていく。
初年度はノックアウトマウスの準備などで実験補助員の人件費が多くなった。一方、実験器具や試薬はできるだけ既存のものを使った。次年度以降もマウス管理用の実験補助員の人件費が見込まれるため、次年度使用額を使っていきたい。
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JOURNAL OF NEUROPATHOLOGY AND EXPERIMENTAL NEUROLOGY
巻: 77 ページ: 827-836
10.1093/jnen/nly060.