研究課題/領域番号 |
18K16505
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
川口 哲 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60814217)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | β3アドレナリン受容体 / リポポリサッカロイド / 敗血症 / 敗血症性心筋症 / 心筋代謝 |
研究実績の概要 |
8-10週のC57BL/6の雄マウスにリポポリサッカロイド(LPS) 10ng/kgを腹腔内注射し、6時間ごとに心エコーで心機能評価を行ったところ、LPS投与6-12時間後で心機能が最小となり、24時間後に投与前までに改善した。また、LPS投与3時間後に生理食塩水の腹腔内投与(NS群)、特異的β3AR刺激薬であるCL316243 1mg/kgの腹腔内投与(CL群)、特異的β3AR遮断薬であるSR59230A 1mg/kgの腹腔内投与(SR群)を行い、LPSの代わりに生理食塩水のみを腹腔内投与した無介入群(CT群)の4群で比較した。NS群と比較し、SR群では明らかに心機能は低下しており、一方、SR群では心機能は低下せずCT群と有意差を認めなかった。各群10匹ずつの24時間生存率では、NS群60%、SR群100%、CL群20%、48時間生存率はNS群40%、CL群20%、SR群10%と明らかな有意差を認めた。次にLPS投与12時間後に心臓を摘出し、β3ARの発現を確認したところ、PCR、ウェスタンブロット法においてNS、CL、SR群で明らかにβ3ARの発現が上昇していた。 また、ルシフェラーゼ発光法で各群のATP解析を測定したところ、CT群と比較し、NS群、CL群は有意に低下していたが、SR群では高く保たれており有意差を認めなかった。 次に、心筋脂肪酸代謝に必要なCD36、CPT1をPCR法で確認すると、NS群、CL群で低下しており、SR群で高く保たれていた。また、糖代謝に必要なGLUT4についても同様の結果が得られた。すなわち、SR群では脂質代謝、糖代謝とも保たれている事が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、LPSによる敗血症性心筋症モデルの作成、β3アドレナリン受容体刺激・遮断薬の量の決定、LPS投与後の心機能の変化、心筋代謝の変化を解明することである。これらついては、おおよその通り進行できている。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症性心筋症の原因の一つにミトコンドリア機能障害があげられる。今後は、このミトコンドリア機能について解明していく。PCR法において、ミトコンドリア機能を示すPGC1α、ERRαなどの遺伝子発現を確認する。また、COX-1染色などの免疫染色や電子顕微鏡を用いて、ミトコンドリアについての機能、形態的変化を観察する。また、敗血症性心筋症の心筋代謝をさらに解明するため、エネルギー代謝遺伝子についてのメタボローム解析を行う。
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