敗血症性では、心筋エネルギー代謝が障害される。これは、心筋脂肪酸代謝障害やミトコンドリア機能障害が原因である。これまでの実験で、β3アドレナリン受容体(β3AR)遮断薬投与群(SR群)では、心筋脂肪酸代謝やミトコンドリア機能に関与する遺伝子発現を改善させる事が示された。 次に、心筋ミトコンドリア機能を調べるため、ミトコンドリアエネルギー合性能に直接的に関わる Electron Transport Chain (ETC) Complex Proteins Ⅰ-Ⅴをウエスタンブロットで定量した。SR群において、これらの蛋白発現は有意に増加し、生理食塩水投与群(NS群)、β3AR刺激薬投与群(CL群)では有意に低下していた。 病理組織学的検査を行なったところ、オイルレッドO染色では、NS群において多量の脂肪滴の沈着を認め、CL群ではさらに多量の脂肪滴沈着を認めた。一方、SR群では、これらの脂肪滴はほとんど認められなかった。これは、電子顕微鏡での観察でも同様であったが、ミトコンドリアの変形や数の違いは確認されなかった。また、cyclooxygenase 1 (COX-1)の免疫染色では、NS群、CL群でCOX-1の活性は有意に低下し、SR群では有意に改善されていた。 これらの結果から、SR群で心筋エネルギー代謝が改善する事が証明されたが、その要因について調べるため、敗血症に関わるNOとβ3ARの関係に着目した。NS群では、コントロール群(CT群)と比較し有意にNOが増加していた。一方、CL群ではNS群と比較し有意にNOの発現が増加しており、SR群では有意にNOの発現が低下していた。さらに、iNOSの発現を確認したところ、NS群、CL群で有意に増加したが、SR群では有意に抑制されていた。これらの結果から、β3ARが独自のiNOSおよびNO調節機構を有している可能性が示唆された。
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