研究課題/領域番号 |
18K16509
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小島 光暁 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (40815065)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / 外傷出血性ショック / 腸管虚血再灌流障害 |
研究実績の概要 |
本研究は、外傷出血性ショック後に腸管で産生されるエクソソームに含有されている炎症性メディエーターを同定することを目的とする。具体的にはin vivo, in vitroでそれぞれ腸管虚血再灌流のモデルを作成し、腸管および腸管上皮細胞由来のエクソソームを分離精製する。そのエクソソームに含まれる、タンパク、脂質、miRNAをそれぞれ網羅的に解析し、重症外傷後多臓器不全に対する新たな治療標的を発見するとこを目指している。 今年度は具体的に以下2つの研究を遂行した。 ①ラット腸管虚血再灌流モデルを作製し、腸間膜リンパ液からエクソソームを分離することに成功した。エクソソームの存在確認は、表在タンパクをウエスタンブロット法で確認した。ショック後に精製したエクソソームが炎症作用を持つことを、種々のex vivoの実験で証明し、さらにそのエクソソームに含有される脂質を網羅的に解析した。その結果、ショック後のエクソソーム中に特定の不飽和脂肪酸含有リゾリン脂質が有意に増加することを発見した。その成果は、2019年6月の国際学会で口演発表した(Academic surgical congress、ヒューストン、米国)。現在は、論文を査読付き英文雑誌(Journal of Trauma and Acute Care Surgery)に投稿し、査読中である。 ②腸管上皮細胞を用いたin vitro腸管虚血(低酸素)モデルの作製を行った。低酸素に暴露した培養細胞の上清よりエクソソームを精製することに成功した。エクソソームは、電子顕微鏡やタンパクマーカーを用いて存在確認をした、刺激前後で回収したエクソソームをそれぞれ、高精度質量分析法でタンパク解析を行った。その結果、特定の炎症性タンパクが刺激で増加することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、in vivoのラットを使用したモデルの腸間膜リンパ液に含まれるエクソソームのタンパク解析を検討していたが、米国より先行論文が発表されたため、方針を若干修正して脂質解析やmiRNAの解析を先行した。同時に、in vitroで腸管虚血再灌流モデルを作製し、予定していたエクソソームに対するタンパク質量分析を実施した。
若干の研究計画の変更はあったが、予定していたin vivo, in vitroの研究はそれぞれ論文作製と学会発表の段階に来ており最終年度を前に概ね順調な進行状況であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の如く、in vivoの研究は、すでに国際学会で発表し、英文雑誌に投稿が完了した。現在は査読待ちの状況である。in vitroの研究に関しても、9月の国際学会(米国外傷外科学会、Web開催)で発表予定である。 最終年度は、追加実験の必要性も考慮してin vitro研究を可及的早期に査読付き英文誌に投稿する予定である。
これまでに、エクソソームに含有される脂質、タンパクからは学術的に興味深い研究結果が得られているので、今年度は既に採取が完了したサンプルのmiRNAの解析も追加したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、実験室の必要物品の一部が購入できなかったため。
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