H1N1pdm09新型インフルエンザやH7N9鳥インフルエンザでは、若年層を中心に急性呼吸促迫症候群(ARDS)が深刻な問題となった。本研究ではARDSに代表されるインフルエンザ重症化の新規制御策構築を目指して、微生物構成成分を認識する自然免疫受容体であるC型レクチン受容体(CLRs)に着目した。CLRsのうち、高マンノース糖鎖を認識するDectin-2およびMincleに焦点を当て、両受容体がインフルエンザ重症化制御に向けた鍵分子となりうるかどうかについて解析した。 骨髄由来樹状細胞(BM-DCs)をHAで刺激したところ、Dectin-2遺伝子欠損(KO)マウスにおいて炎症性サイトカイン産生が顕著に低下した。一方でMincle KOマウスにおいては野生型マウスと同等の産生であった。HAに含有されるマンノース糖鎖が関与しているかを確認するため、マンノース除去処理をしたHAでBM-DCsを刺激したところ、炎症性サイトカイン産生が消失した。受容体側への影響を調べるため、マンノース結合部位阻害剤でBM-DCsを処理したところ、阻害剤処理群ではHA刺激による炎症性サイトカイン産生が有意に低下した。さらに、Dectin-2またはMincle遺伝子を導入したレポーター細胞をインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)で刺激したところ、Dectin-2とHAの結合が確認できた。しかし、この結合はウイルス株の種類により結合性が異なることが示唆された。 以上から、インフルエンザウイルスHAによる炎症反応誘導においてDectin-2が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。この知見は、Dectin-2がARDSを始めとするインフルエンザ重症化における重要な分子であることを示唆し、Dectin-2を基盤とした重症化制御に向けた基礎的情報を得ることができた。
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