研究課題
腎機能低下は体液貯留を引き起こし、血管内皮障害と深くかかわっている。血管内皮細胞の表面にはグリコカリックスが存在し、血管透過性の維持に重要な役割を担っているが、循環血液量増加で生じる機械的刺激によりグリコカリックスが障害されると水分の血管外漏出が増加し臓器障害が生じる。本研究では体液貯留により血管内皮グリコカリックスの構造にどのように変化するのかを検討することを目的とし、動物実験と患者血清を用いた臨床研究を行う。動物実験では、10週齢のオスのC57BL6マウスから左腎上極1/3と下極1/3を切除し、さらに右腎を全摘して腎亜全摘モデルを作成して検討を行った。まず、腎摘出術6週後に屠殺し、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓の血管内皮グリコカリックスの超微形態について検討を行った。血清クレアチニン、尿素窒素は腎亜全摘モデルにおいて有意に上昇が認められた。アルシアンブルー染色により腎臓を評価したところ、腎糸球体が5/6腎摘出術群で染色が弱くグリコカリックスが傷害されていることが示唆された。健常マウスにおいてはそれぞれの臓器において血管内皮を覆うように存在しているグリコカリックスは、腎亜全摘モデルにおいては内皮より剥離し血管内皮表面が血管内腔に露出していた。腎亜全摘により多臓器にわたり血管内皮グリコカリックスが傷害されることが確認できた。腎機能の低下は血管内皮障害を引き起こし、他の臓器への傷害の一因となると考えられた。臨床研究においては、現在患者からの血液サンプルを収集中である。
2: おおむね順調に進展している
動物モデルを確立し、血管内皮の形態学的な評価を行うことができている。また、臨床研究においても血液サンプルは順調に集まってきている。
グリコカリックスに強い障害が加わると血中に流出してくる。本研究では急性血液浄化療法を受けている患者の、血液浄化療法前後での血中シンデカン-1およびエンドカン測定によりその血管内皮傷害の程度を推測し、血行動態との相関、各臓器傷害マーカー(トロポニンI, CK-MB, 総ビリルビンなど)との関連などを明らかにする。対照群として、健常人ボランティアならびに維持透析患者の血清を用いて比較検討を行う。動物実験は継続し、定量的な評価をおこなっていく。
差額が10000円以下であることから、当初予算と実使用額に誤差を生じたもの。この差額に関しては、研究遂行に必要な物品などの充当する
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