研究実績の概要 |
腎機能低下は体液貯留を引き起こし, 血管内皮障害と深くかかわっている. 血管内皮細胞の表面にはグリコカリックスが存在し, 血管透過性の維持に重要な役割を担っているが, 循環血液量増加で生じる機械的刺激によりグリコカリックスが障害されると水分の血管外漏出が増加し臓器障害が生じる. グリコカリックスに強い障害が加わると血中に流出してくる. 本研究では血液浄化療法を受けている患者の, 血液浄化療法前後での血中シンデカン-1測定によりその血管内皮傷害の程度を推測し, 血行動態との相関, 各臓器傷害マーカー, 透析時間との関連などを明らかにする. 当施設において2017年3月から2019年12月の間に血液透析を施行された患者145人(男性101人、女性44人)を対象に血液透析前後の血清中のシンデカン1を測定した. 患者の平均年齢は66±13歳であった. 透析前の血清シンデカン1濃度が124.6±107.8ng/mLであったのに対し透析後の血清シンデカン1は229.0±138.1ng/mLと有意に上昇していた. また, 透析時間と血清シンデカン1濃度については相関が確認され, 透析時間が長いほど血管内皮障害が進行することが確認できた. 動物実験においては, 10週齢のオスのC57BL6マウスから左腎上極1/3と下極1/3を切除し, さらに右腎を全摘して腎亜全摘モデルを作成する。術8週後に屠殺し, 脳, 心臓, 肺, 肝臓, 腎臓の血管内皮グリコカリックスの超微形態について検討を行った.血清クレアチニン, 尿素窒素は腎亜全摘モデルにおいて有意に上昇が認められた. また, それぞれの臓器で腎亜全摘モデルにおいては内皮より剥離し血管内皮表面が血管内腔に露出していた。
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