昨年度までに、ARDS患者における下気道細菌叢と炎症性サイトカインおよび予後との関連を明らかにしてきた。2020年から世界中で流行したCOVID-19は重症例ではARDSをきたし、多くの死亡患者が発生した。その重症化の機序は明らかでなく、有効な治療が模索されているため、病態解明が重要であった。 研究者は、2021年度までに非COVID-19によるARDS患者の下気道検体と血清検体を有しており、新たにCOVID-19によるARDS患者の下気道検体と血清検体を用いて、非COVID-19によるARDS患者との比較を行うことで、ARDSの病態解明につながると考えた。最終年度はCOVID-19患者から収集した血清検体を用いて炎症性サイトカインや肺胞障害マーカーであるRAGEやAng-2の測定を行い、非COVID-19によるARDS患者との比較を行った。この結果は非COVID-19によるARDSは異質性が高いが、原疾患により炎症性サイトカインや肺胞上皮障害の程度が異なっていること、COVID-19はCOVID-19以外のウイルス感染によるARDSの炎症パターンと類似していることを示唆した。 これらはARDSの病態を解明する上で重要な知見であり、今後は引き続きサイトカイン以外のデータにも着目し、さらなる研究を進めることで、COVID-19を含めた原因疾患によるARDSの病態解明につながることを目標とする。 また、ARDS患者において人工呼吸器管理は必須であり、その管理方法については未だ不明な点も多い。特に人工呼吸器と患者呼吸との同調不良は患者に悪影響を及ぼすと考えられていたが、十分な知見が得られていないため、システマティックレビューを行い、その影響を明らかにした。
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