研究課題/領域番号 |
18K16529
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
澤田 悠輔 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90805897)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 熱傷 / 間葉系幹細胞 / 間葉系幹細胞培養上清 / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
現在、重症熱傷の治療法については、局所の熱傷に対する早期のデブリドマン及び自家・培養表皮移植感染や炎症に対する集中治療管理が中心となっている。一方で、全身の侵襲後免疫不全や炎症反応に対する画期的な治療法は未だに開発されていない。 そこで、我々は多分化能と抗炎症作用を保持している間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)、さらに間葉系幹細胞培養上清に抗炎症作用を有する液性因子が多数含まれていることに注目し、間葉系幹細胞培養上清の投与によって、熱傷における局所の皮膚の再生に加えて、全身の炎症反応や免疫機構が制御されるかどうか検証を行っている。 当該年度においては、C57BL/6マウス(8-9週齢)を用いて、湯浴法によるⅢ度熱傷モデルマウス、及びマウス骨髄由来間葉系幹細胞を作成した。Ⅲ度熱傷モデルマウスに対して、間葉系幹細胞培養上清を熱傷受傷直後から5日間連続して眼窩静脈叢から静注した。経時的に熱傷皮膚を観察した結果、受傷7日目は、間葉系幹細胞培養上清群とコントロール群で皮膚治癒率に差はなかったが、受傷14日目と21日目には肉眼的治癒率に有意差を認めた。 間葉系幹細胞培養上清の投与によって局所の熱傷皮膚病変が肉眼的に改善する傾向があることが明らかになりつつあるため、現在は熱傷皮膚病変の組織学的な解析と免疫学的な解析を進めているところである。我々は上記の結果をまとめ、2020年11月末に開催された第48回日本救急医学会総会・学術集会で報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ⅲ度熱傷モデルマウスの作成方法の確立と間葉系幹細胞の安定的な供給は既に可能となっている。また、Ⅲ度熱傷モデルマウスに間葉系幹細胞培養上清を投与する実験モデルも確立できていると考えている。今後は、熱傷皮膚の組織学的な解析、および生体内のサイトカインの挙動についての解析を中心に研究を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も間葉系幹細胞培養上清を用いた新規重症熱傷治療法の開発に関する研究を推進していく。 具体的には、Ⅲ度熱傷モデルマウスに対して、間葉系幹細胞培養上清を静脈内投与することにより、熱傷皮膚の組織学的な解析、さらには生体内のサイトカインの挙動を解析することで、間葉系幹細胞培養上清投与による重症熱傷の治癒・治療効果を総合的に判定する計画を予定している。 また、近年では間葉系幹細胞由来エクソソームも注目されている。間葉系幹細胞培養上清に重症熱傷に対する治療効果が期待できるのであれば、間葉系幹細胞由来エクソソームでも治療効果が得られるかどうか解析を進めていきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
既存の研究物品を使用しつつ、新たな物品や実験動物等の購入を行っている。 次年度にも新たな研究物品や実験動物の購入を計画している。
|