高気圧酸素治療 (Hyperbaric Oxygenation Therapy: HBOT) とは、チャンバー内に患者を収容し、大気圧より高圧環境の中で酸素を吸入させることで病態改善を図る治療である。1950年代よりその有用性が認識され、技術的に確立された治療として種々の疾患に臨床応用されている。HBOTと抗菌薬に関しては、アミノグリコシド系抗菌薬と緑膿菌においては細胞壁を超える効果を認める報告があるが、経験的治療とその結果に支えられたHBOTは未だ基礎医学的な裏付けが不十分である。本研究は動物実験モデルを用いてHBOT療法のメカニズムについて検討を行う。 HBOT施行後のマウスにMeropenem(MEM)を静脈投与し、投与後15分値における血中薬物濃度、肺、肝臓における組織薬物濃度がコントロール群と比較し、いずれも有意に増加していることを確認した。また、血中から臓器への移行性を反映させるために、同一検体で血液、各臓器を速やかに採取し、薬剤投与後5分後、10分後、15分後、30分後の血中並びに組織中のLC-MSで測定を行った。この結果MEM与後15分値における血中薬物濃度、肺、肝臓における組織薬物濃度がコントロール群と比較し、いずれも有意に増加していることが確認できた。 さらに肝臓においてGenearrayによる網羅的遺伝子解析を行ったところ、薬物代謝に関わる因子が動いていることが明らかとなった。
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