研究課題
頭部外傷患者では遠隔臓器において全身性合併症をきたすことがよく知られており、中でも肺障害は重症頭部外傷において比較的高率に合併し、予後に直結する重要な合併症であることが以前より知られている。頭部外傷後の肺障害に関する発症機序は不明点が多く、ノルエピネフリンなどのカテコラミンの過剰産生が主因であると考えられてきたが、我々の先行研究において、頭部外傷動物モデルにおいて血漿中のノルエピネフリン上昇は確認されず (Yasui H, et al. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2016)、臨床の現場においてもノルエピネフリン上昇を伴わない頭部外傷後の肺障害症例を経験し、2018年度に論文化した (Yasui H, et al. Inten Med 2018)。一方で肺障害合併症例では頭部外傷直後から過剰なトロンビン産生が確認され、発症機序として脳内に多量に含まれる組織因子 (TF) を開始因子とした外因系凝固カスケードの活性化が主因であることが推測された。本仮説の証明のために頭部外傷後の血漿を用いたプロトロンビン時間 (PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間 (aPTT)などの凝固活性、thrombin/antithrombin (TAT)、TFマイクロパーティクルなどの凝固因子の測定を行っている。また凝固カスケードや凝固カスケードの下流に位置するトロンビンの活性化と肺障害との関連性を証明するために浜松医科大学医生理学教室の浦野教授の助言のもと、頭部外傷動物モデルを作成し、血漿中の凝固活性とTATなどの凝固因子を測定、頭部外傷後に血漿中のTAT値の有意な上昇が確認され、肺障害の出現とともに全身におけるトロンビン活性の上昇が確認された。
3: やや遅れている
動物一匹から採取できる血液量が少なく、血漿を用いて複数の項目を評価することが困難であり、凝固活性や凝固因子の解析に時間を要している。
頭部外傷後に脳由来TFマイクロパーティクルが体循環へ流入することで、外因系凝固カスケードが全身性に活性化することが急性肺障害の発症要因であるという仮説のもとに、血漿中のTFマイクロパーティクルの測定を実施する。並行して、マイクロパーティクルの起源が脳由来であることを確認するために、フローサイトメトリーを用いて脳由来TFマイクロパーティクルがどの程度の割合を占めるのか検討する。次に外因系凝固カスケードの活性化が肺障害の主因であることを確認するためTF中和抗体もしくはFVII阻害薬を外傷前投与し、トロンビン阻害薬を使用した場合と比較して採取した肺組織の肺障害の程度を比較検討する。最後に凝固カスケードの下流に位置するトロンビンの凝固活性を抑制するリコンビナントのトロンボモジュリン製剤を外傷前に投与し、肺障害の予防が可能か肺組織を用いて評価する。
血漿中の凝固因子、蛋白をELISAキットを購入して測定する予定であったが、測定予定の血漿サンプルの数に達しておらず、翌年度に繰り越しとなった。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 3件)
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