敗血症は感染に伴う全身性炎症反応から不可逆的な多臓器不全を来す重篤な病態であるが、未だに根本的な治療法は見出されていない。本研究の目的は骨髄由来単核球細胞(BMMNCs)の移植療法による強力な抗炎症作用、組織保護作用に着目し、マウス敗血症モデルに対してBMMNCSを移植し、有効性を評価することである。 盲腸結紮穿刺(CLP)ラットに対して骨髄由来単核球細胞を5百万個/ratを尾静注投与し(BMMNCs群)、コントロール群(同量のPBSを尾静注投与)と7日間生存率、血清中サイトカイン濃度、組織学的所見の比較を行った。7日間生存率はcontrol群 では25% (4/16)であったのに対して、BMMNCs群 では75.0% (12/16)とcontrol群と比較して有意に高かった(ログランク法、p < 0.05)。またCLP暴露後3、6、12時間後の血清サイトカイン濃度(血清IL-6、TNF-α、IL-1β、ヒストンH3)はsham群と比較して、control群で著明に上昇していたが、BMMNCs群では上昇が抑えられていた。血清中のSyndecan-1(グリコカリックス層の主成分)に関しても、control群と比較してBMMNCs群で有意に上昇が抑えられていた。また24時間後の肺における間質の浮腫、炎症細胞浸潤はcontrol群と比べてBMMNCs群で軽微であり、血管内皮のSyndecan-1の免疫染色所見からは、その脱落が抑えられていたことが示された。さらに肺の走査電子顕微鏡所見より、血管表面のグリコカリックス層の変化がBMMNCs群ではcontrol群と比べて軽微であることが示された。以上の結果より、BMMNCs投与により血管内皮のグリコカリックス層の保護を介して、敗血症による全身性炎症反応、遠隔臓器障害が抑制され、生命転帰の改善につながる可能性が示唆された。
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